天佑を信じて突撃せよ-神潮特攻菊水隊

「天佑を信じて突撃せよ」

神潮特攻菊水隊 
 仁科関夫中尉



『汝(なんじ)の国の青年を示せ、余(よ)汝(なんじ) (*1)の国の将来を語らん』と。吾人(ごじん) (*2)青年はこの意気ありや。示されて悔(くい)なき若人(わかうど)幾人(いくたり)かいる。


 漠然たる存在とは吾人の存在というか。余りにも嘆(なげ)かはしからずや。奮起せよ、覚醒せよ「眠れる獅子」も猛(た)けることを知らずして何の獣王(じゅうおう)ぞ。「満弦(まんげつ)の矢」も放たるることなくして何の必中ぞ、何の威力ぞ。


 戦局皇国の興廃を決するの秋、今にしてわれら若人(わかうど)挙(こぞ)って殉国の至誠(しせい) (*3)に燃えずんば、いつの日か醜(しこ)の御楯(みたて) (*4)と化することが出来よう。「八生報国(はっしょうほうこく)」の白鉢巻を額に菊水魂(きくすいだましい)に生き抜いて、怒髪天(どはつてん)を衝(つ)き (*5)、右手に日本刀を握りしめ、爆発桿(かん) (*6)に添い、左手に兄と慕う大尉の遺影を掲げ、胸に神州の曙(あけぼの)を描いて、
 
 大元帥陛下の万歳を唱えて、ただ敵空母に大和魂をぶっつけて行(ゆ)くぞ。


 君の為、只(ただ)一条(ひとすじ)の誠心に当(あた)りて
  砕けぬ敵やはあるべき


 大君(おおきみ)の醜(しこ)の御盾(みたて)と出(い)で立った
  後見ん心は御代(みよ)の曙(あけぼの)


 七度(ななたび)も生きかへりつつ
  えみしらを払いつくすが日本魂(にっぽんだましい)


 入手する情報に吾人の士気いよいよ昂(あが)る。敵艦を芋(いも)刺しにせざれば止(や)まぬ意気、生も享(う)けて二十数年。この間に涵養(かんよう)されたる全力を奮う秋は近く到来す。各教育課程無駄なりしものはなし。
 

 本攻撃の術力(じつりょう)には未熟を痛感するのみ。ただ神佑を確信し、御稜威(みいず) (*7)の下(もと)に全力を傾注して、そこに撃滅するのみ。二十数年の教育の精髄は瞬時に展開さるるのだ。



 神州不滅、神勅(しんちょく)炳(へい)として輝く (*8)、八紘一宇(はっこういちう)の業(ぎょう)、日に成り、月に進む。


 神史(しんし)を繙(ひもと)く、見よ純忠至誠(じゅんちゅうしせい)の人士(じんし)、無数にその史上に見る。然(しか)れどもそれ逆賊もまた跡を絶たず。希(ねがわ)くば神州天地人、皆(みな)一体の尽忠(じんちゅう) (*9)に凝結せんことを。



 必死もって大義(たいぎ)擁護の後嗣(こうけい)を造れ
 
 しかしてそれは汝(なんじ)子孫に求むるを最良とし、縁無きも、一乗根器(いちじょうこんき) (*10)士の(し)たらば次策(じさく)となす。一個忠烈にして後世をして奮起せしむるは止(や)むを得ざるの下策 (*11)と知れ。



 ウルシー在泊(ざいはく)艦(かん)無慮(むりょ)百数十、戦争だ。

 一時(いっとき)の敗(はい)、捉(とら)わるるに足らず。敵機動部隊を出撃前、その基地に覆滅(ふくめつ)するが神潮用法の第一義たるは言を俟(ま)たず。
 
 戦機は拱手(こうしゅ) (*12)してやってくるものに非ず。

 断行、天佑神助を確信し、断じて行い、戦機の把握に努むるを要す。







【出典】1956(昭和31)年 日本文芸社 「現代読本」 第一巻第四号所収 中村一也 「(秘録)神風特攻菊水隊 仁科関夫中尉の遺書」








  • 最終更新:2014-11-08 06:27:36

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