【第六十一振武隊】若杉潤二郎

若杉潤二郎

昭和十七年十月現役兵として大村連隊に入隊、二十年四月二十八日、第六十一振武隊として出撃散華


 遺 書

先日は突然帰って驚きの事だったらうと想ひます 未だお会ひ出来るものと考へて居りましたが二日後には九州の地へ一足飛びに来ました 早速お便り差上げようと思ひ乍(なが)らさて改って書く事もなく過して来ました 何の親孝行も出来ず心苦しく思ひます 二十六年 幸せだったと心から思ひます 有難うご座いました 一足先父上と大好きだった園ちゃんのところへ参ります 入営と同時に皇国の為捨てる命と定めておりましたが、やっと年来の希望かなひ特攻の大命を拝し喜んで死んで行きます お母さんは喜んでくれると信じます 大命を拝して以来色々と親切にしてもらひあたりまへの事をする吾々(われわれ)にとっては心苦しい位です

自分も小隊長として可愛い部下三名 十九と二十の若武者を引きつれて突撃して征きます 花はつぼみと言ひますが本当に清らかなものです 篠原 田中 山本の三伍長です この手紙がつく頃は見事戦果をあげてみせます 自分よりこの三人の可愛部下の為祈ってやって下さい

何か書かなければと思ひ乍ら筆が進みません 金銭と女性関係はありません 貯金 妹の為何かに使って下さい 僅か三時間でも皆(み)んなに会へたのも父上の引合わせと思います

くれぐれもお身ご大切に長命を祈って居ります お元気で お元気で お過し下さる様

では征きます 必ずやりますからご心配なく


    皇国の弥栄祈り玉と散る
     心のうちぞたのしかりける

                                   潤二郎


【出典】1977(昭和52)年 原書房 寺井俊一編 「航空基地都城疾風特攻振武隊」




  • 最終更新:2016-03-14 07:31:25

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