【第五九振武隊】小川 栄
小川 栄
少飛(少年飛行兵)十四期、昭和二十年五月二十八日、第五九振武隊として出撃散華
(遺筆その一)
皆様御達者で御暮しの事と思ひます 私も依然元気です
いよいよ私の征く日が参りました 隊員皆士気旺盛頑張って居ります 必殺必沈を確信して居ります
先輩同期も一足先に行った者もあります 国家の為皆喜んで任務を完(まっと)うして居ります
〇〇基地を出発の特別攻撃機一路沖縄決戦場に直進 私の目標は中城湾敵艦船群です 父母 兄の仇鬼畜米英何千人と無理心中をします 沖縄決戦勝利の鍵は拓かれてあります 今は空挺隊 特攻隊の大打撃を打(う)け敵の苦戦も相当なものです
私も諸国色々の処で地方の人々に相当御世話になりました 又何れ手紙並に写真が届くことと思いますが其(その)節は御礼私に代って言って下さい 私も人々に色々の慰問品等毎日の様(よう)に戴き若干は贅沢をしました 思ひ残すことはありません 必ずやります
五月二十八日九時沖縄中城湾に壮烈散ります 必勝を確信して已(や)みません
皆様も永久に御達者で 皆々様に宜(よろ)しく さやうなら
出撃前夜 〇〇基地にて 栄
皆様へ
明朗
(遺筆その二)
お父様 お母様 皆々様さやうなら
栄は喜んで征きます 生涯の御恩忘れません 永らく御達者で
若花(ざくら)南の空にはゞたかん
うちてしやまむ沖つしら波
【出典】1977(昭和52)年 原書房 寺井俊一 「航空基地 都城疾風特攻振武隊」
- 最終更新:2016-05-28 12:40:12