【第五七振武隊】棧 武夫

棧 武夫

宇都宮飛行学校卒(少飛十五期)、水戸、加古川等転属後、昭和二十年五月二十五日、第五七振武隊として出撃散華


御両親様永い間御世話になり有難う御座居ました。武夫は愈々(いよいよ)君国の為散って征きます。

生ある者は必ず亡ぶは当然の事 況して (*1)皇国護持の大任を果し悠久の大義に生きる事の出来る喜、何に例へる事が出来ましょう。

十九年間慈愛を以て養(やしなっ)て下さいました大恩は散っても忘れません。唯(ただ)此(こ)の長い間の御恩に対し 何一つとして孝養を尽し御安心を願う事が出来ず申訳(もうしわけ)ありません。でも最後の忠を孝と思って御許し下さい。軍人一度任務を命ぜられた以上は心中に何もありません。本日迄磨きに磨いたハヤテを以て敢然と正式空母目がけて突込み撃沈せざれば止まずの旺盛なる攻撃精神あるのみです。

御両親様 武夫が散ったとて決してお嘆き下さいますな。吾(わ)が子天晴れ良くやって呉(く)れたと言葉を掛けて下さい。皇国が勝つ迄は吾々(われわれ)に続く者の絶えない事を信じて居ります。御両親様二人に喜んで頂く事の出来る此(これ)位嬉しい事はありません。何卒御身体には十二分の注意を払ひ一日も長く国の為御奮闘下さい 之(これ)のみ心に念じ神に祈って止みません。

   昭和二十年四月十八日
 
 御両親様



【出典】1977(昭和52)年 原書房 寺井俊一 「航空基地 都城疾風特攻振武隊」

  • 最終更新:2016-05-25 14:18:21

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