【第一八金剛隊】市川猛
市川 猛
濱松高工
神風特別攻撃隊第一八金剛隊、昭和二十年一月五日比島にて戦死 二十三歳
千人針
天の優しい御恵みと思ひますが、本日出撃の豫(予)定が天候不良のため明日に延期され、おかげで心のこもる千人針が私の手に入りました。嬉しく身につけ南の決戦場に参ります。私は千人針はとても間にあはないだらうと断念してゐたのですが、愈々(いよいよ)出撃の幾時間か前に私の手に入りました。また好物沢山(たくさん)、有難さで一杯でした。可愛い私の教へ子の練習生にもやり、一緒に喰(た)べて別れました。
母上様よりの「御守護札」肌身はなさず持って任務に向って参ります。では御禮(礼)まで。
猛より
父上様
母上様
誓
一瞬の飛行作業も即ち戦闘なり。
救世の務めなり。最後の忠節なり。
今日も一日最善を盡(尽)さん。
【出典】1953(昭和28)年 白鷗遺族会編 「雲ながるる果てに-戦没飛行予備学生の手記-」
- 最終更新:2015-11-30 06:34:22