【神風特別攻撃隊第二七生隊】岡部平一
「祖国を胸に 黙って死地へ」
海軍少尉 岡部平一
神風特別攻撃隊 第二七生隊 台北帝大出身 二三歳
二〇年二月二二日
ついに特別攻撃隊神風特攻隊員となる。きたるべき三〇日間、余の真の人生なるか。時機至る焉。死ぬるための訓練が待っている。美しく死ぬるための猛特訓が。
悲壮なる祖国の姿を眺めつつ余は行く。全青春を三〇日間にこめて人生駈け足に入る。
出撃を旬日にひかえて
自分は一個の人間である。善人でも悪人でもない。偉人でもなければ愚人でもない。あくまで一個の人間である。最後まで人生をあこがれの旅に送った漂泊者として、人間らしく、ヒューマン・ドキュメントと諦めのうちに終りたいと思う。
雑音の多すぎる浮世であった。
たったひとりの偉大なる指揮者がいなかったために、みんなが勝手な音調を発したために、ついに喧騒きわまりない社会を出現したのであった。もっと落着いた人間社会が建設されなければならぬ。
われらは喜こんで国家の苦難のまっただ中に飛込むであろう。われらはつねに偉大な祖国、美しい故郷、強い日本女性、美しい友情のみ存在する日本を理想の中に確持して敵艦に粉砕する。
今日の務(つとめ)はなんぞ 戦うことなり
明日の務(つとめ)はなんぞ 勝つことなり
凡(すべ)ての日の務はなんぞ 死ぬことなり
われらが黙って死んでいくように、科学者も黙って科学戦線に死んでいただきたい。そのときはじめて日本は戦争に勝ち得るであろう。もし万一日本が今ただちに戦争に勝ったら、それは民族にとって致命的な不幸といわねばならない。
生やさしい試練では民族は弱められるばかりである。
いさぎよく散りて果てなむ春の日に
われは敷島の大和さくら子
【出典】1967(昭和42)年 河出書房 猪口力平/中島正著 「太平洋戦記 神風特別攻撃隊」
- 最終更新:2016-03-14 08:10:13