特別攻撃機「桜花」
連合軍に「Baka Bomb」と名付けられたロケット推進式の飛行爆弾で、搭乗員もろとも、敵艦に体当たりする。
本機は「一式陸攻」につり下げられて敵艦に接近し、上空で母機を離れてロケット推進で突進するもので、ロケットの作動時間は約30秒であったため、作動範囲が非常に制限され、作戦的に不利であった。
実戦では母機が、敵艦隊の遥か手前で、敵戦闘機に撃墜されることが多く、当初の計画のように戦果をあげることは極めて困難であった。
昭和20年3月、鹿屋の神風桜花部隊が大挙、敵艦隊に向って出撃したが、途中グラマン機に捕捉されて全滅の悲運にあい、以来その活動は消極的であった。
後には航続距離の長いジェット動力の改造「桜花二二型」も試作されたが、実戦には参加することなく、多数の一一型と少数の二二型は、鹿屋、厚木、横須賀等の防空壕内にねむったまま終戦をむかえた。
戦後、米英で日本自殺機「Baka Bomb」として、それぞれ博物館などに展示されたため、世界の注目をひき、零戦とともに最も有名な日本機となった。
米軍側の強力な防御態勢、母機一式陸攻の低速、脆弱性などが重なり、突入成功の確率は低かったが、爆薬が強力(1200㎏の徹甲弾)だったため、命中すれば威力は大きかった。
製作所 空技廠、霞ヶ浦空技廠、大村空廠、日本飛行機、富士飛行機、愛知、その他。
生産機数 一一型 755機、二二型 50機。
【特別攻撃機「桜花」一一型】
【参考データ】
機 名 | 「桜花」一一型 | 自 重(kg) | 440 |
記号 | - | 搭載量(kg) | 1700 |
発動機数 | 単ロケット (3筒) |
全備重量(kg) | 2140 |
主翼型式 | 中単 | 最大速度(km/h)/高度m | 350/- |
乗員数 | 1 | 上昇時間m/分秒 | - |
発動機名 | 四式一号二〇型 | 実用上昇限度(m) | - |
発動機型式 | 火薬ロケット | 航続距離km(又は時間) | 20 |
離昇馬力 | 推力800㎏ | 機関銃または機関砲口径(mm)×数 (旋は旋回式)(他は固定式) |
- |
第一速公称馬力/高度(m) | - | 爆弾(kg)×数 | 1200 |
第二速公称馬力/高度(m) | - | 設計所または主な生産会社 | 空廠 |
全 幅(m) | 5.00 | 採用年度 | 昭和19(1944) |
全 長(m) | 6.066 | 連合軍側コードネーム | Baka |
主翼面積(㎡) | 6.00 | 備 考 | 自爆特攻機、母機一式陸攻から離脱。改造型に二二型ジェット機あり |
【略語解説】
高単 | 高翼単葉、主翼を胴体の上に配置 |
低単 | 低翼単葉、主翼を胴体の下に配置 |
中単 | 中翼単葉、主翼を胴体の中位置に配置 |
複葉 | 主翼を胴体の上下に二枚配置 |
一葉単 | 上翼にくらべて下翼が極端に小さいもの |
発動機型式 | |
空 | 空冷式 |
水 | 水冷式 |
液 | 液冷式 |
星 | 星型 |
複星 | 複列(または二重)星型 |
V | V列型 |
W | W列型 |
直 | 直列型 |
数字 | 気筒数 |
【桜花】
千ヾの秋ひとつの春にむかはめや紅葉も花もともにこそ散れ 「伊勢物語」
- 最終更新:2014-11-21 06:38:34