【神風特別攻撃隊第二神風純忠隊】深堀直治

昭和一九年一〇月二七日
 ニコルス飛行場 マバラカット東飛行場
   七〇一空司令殿
   江間少佐殿


                  於セブ飛行場 深堀大尉


 本日私の飛行機は風車止引上装置不良のため「レガスピー」飛行場に着陸し、風車を廻転してただちに離陸、同飛行場上空にて純忠隊のみ集合、「レイテ」湾に進出しました(直援機および誠忠隊は先行しました)。純忠隊の戦場到達は一八時五〇分で、すでに日没後でありました。高度一〇〇〇メートルにて約三〇分捜索しましたが、防御砲火によって敵の艦船数隻の存在を知るのみで、艦種の識別不能、輸送船に体当たりする公算きわめて大でありましたので、攻撃を断念、「セブ」飛行場にむかいました。二番機は戦場上空にて解散後不明ですが、体当たりをやったものと思われます。雲ならびに視界不良のため、成果は私も見ておりません。三番機は防御砲火により被害を受けたるもののごとく、運動不規則で「セブ」飛行場にむかうまで一緒でありましたが、途中よりふたたび戦場に引返したのではないかと思われます。捜索するも見つけることはできませんでした。二〇時三〇分、私のみ「セブ」飛行場に降着いたしました。明朝黎明を期し体当たりを決行いたします。本日教訓となりましたことをご参考までに記して戦闘機に託します。


一、風車止引上装置は出発まえかならず慎重な試験をしてみる必要あり

二、二五番×一(二五〇キロ一個)六番×四(六〇キロ四個)では巡航計器一二五ノット程度なるゆえ、これを考慮して、出発時刻をきめる要あり。薄暮はおそくとも一八時二〇分ごろまでに到達しなければ艦種識別ならびに照準が困難となり、月は出ても下はきわめて見えがたい

三、薄暮夜間攻撃となったため飛行機を見失い、本日の戦果確認は困難であったと思われるが、九九艦爆でおこなっても大丈夫戦果をあげうると確信する。あとに続く人にお伝え願いたい

四、「セブ」を中継として黎明に体当たりをおこなわれてはどうかと思考する。このようにすれば燃料の残量が多いためさらに効果があると思われる。なお戦闘機につかれることも少ない

五、断じてあせらず、無理な状況のときは再挙をはかり、これはと思う奴に体当たりをやるよう、後続の人にお伝え願いたい、一般にあせり勝ちとなり、目標を誤るおそれがある


追記

 列機は本当に可愛いものです。きょうも戦場突入時、各人きちんと敬礼をして「ニコッ」と笑って解散しました。私は涙が出て仕方がありませんでした。これで皇運の隆盛断じて疑いなしと確信いたしました。

 年は若年でも列機の人々の態度のじつに立派であったことは、いまも私の目に残って離れません。特攻隊員の人選は頭をなやまさずとも大丈夫であると信じます。


 ではお別れいたします。御健闘を切にお祈りいたします。




(注)この日(一九四四年一〇月二八日)軽巡洋艦デンバーがレイテ海域において特攻機による損害を受けた、と米軍側は発表している。





【出典】1967(昭和42)年 河出書房 猪口力平/中島正著 「太平洋戦記 神風特別攻撃隊」









  • 最終更新:2016-03-14 08:28:17

このWIKIを編集するにはパスワード入力が必要です

認証パスワード