【特攻隊とマスコミ】読売報知新聞|昭和20年4月11日掲載

出典:1977(昭和52)年 原書房 寺井俊一編 「航空基地 都城疾風特攻振武隊」 都城特攻隊取材録


新鋭の威力示す秋
 葬れ一機一艦

 敵米英沖縄侵攻の神機を狙って猛然奮起航空決戦に敵艦舶〇隻を轟沈破した殊勲の陸軍特攻隊振武隊は、〇〇航空部隊指揮官を育ての親とする陸軍の新鋭飛行部隊で航空士官学校出身の覇気凄絶な若桜を中枢として結成された。出撃の命令降った日特別宿舎に最後の一夜を明した隊長林少尉以下の特攻隊員は必死必殺必勝を期して征(い)でゆく心境を寄せ書に示したのち本隊で最後の乾杯をあげた。

 〇〇部隊長より戦闘指揮あり更に「皇国の興廃は実に今日のこの一戦に懸ってゐる。しっかり落ついて任務を達成大戦果をあげよ。御健闘を祈り且つ御成功を祈る。」と激励の辞を受けるや林隊長は、「実に皇国の興廃を負ふ自分等(ら)隊員は打って一丸誓って御期待に添ひ奉ります。」と決意のほどを凛然と答へる。かくて式を終へ神機は正(まさ)に到来した。満を持して待つ攻撃命令は下ったのだ。

 〇〇航空部隊指揮官の烈々たる訓示を受けた後、隊員は僚友と別れの談笑に一時を送りおはぎ、まんじゅうに最後の肚(腹)をつくって機上の人となったのであった。見れば機長の赤いマフラーは彼等(かれら)の燃ゆる赤心(せきしん) (*1)を表徴するかの如く春光に映えて美しく日の丸の鉢巻には床しくも桜花一輪がさされてゐる。背には守護の神であらう可愛い小さなお人形をおんぶして莞爾として地上に波打つ軍官民多数の大歓呼に応(こた)へる。

 出撃直前林隊長以下全員は記者団と会見したが、「今更別に感慨とてない。ただ必勝を確信し後に続くものを信じて征(ゆ)くのみ。任務は必ず達成する。」と語り淡々とした心境のほどを綴った達筆揃ひの寄せ書を示した。振武隊寄せ書 「轟沈」隊長林弘少尉、「捨身必沈」林玄郎少尉、「断」伊藤少尉、「肉弾」孫谷軍曹、「尽忠報国」浜谷少尉、「一突轟沈明道」上津伍長、「無」田中少尉、「貫徹」石賀伍長、「闘魂」斉藤伍長、「必殺」友枝少尉。

【林玄郎少尉】
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【上津一紀伍長】
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【斉藤信雄伍長】
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  • 最終更新:2018-08-14 15:48:52

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